例えば・・・・
(1)ガラス窓が電源ONの時のみ、ディスプレイになる装置が出来そう。*)
2) 乗用車等の浮き上がるメータ、カーナビ等、フロントガラスへの表示に使えそう。
3)プラスチック基板を用いることで、フレキシブル(折り曲げ可能な)ディスプレイが出来そう。服に着ければウェラブルってやつですか・・・。
4)TOPエミッション素子
今までは、有機膜をつけた後に、透明導電膜を作ることは難しかった(後述<透明OLED(TOLED)の作製のハードル>をご参照下さい。)ので、やむなく、下地(陽極側ガラス側から発光を取り出すのが一般的であった。
陽極側ガラス上に、p-TFT(多結晶薄膜トランジスタ)を形成すると、発光層からの発光に対し、TFTの部分と配線の分が影になる(邪魔になる)ため、どうしても開口率が大きく取れない。
しかし、有機膜上に(電子を注入できる)透明導電膜が作製できれば、上から邪魔物なく光を取り出せます。
この技術によって、
アクティブマトリックス方式のOLEDの駆動回路として設けた(ガラス基板上の)TFT側から光を取り出す必要がなくなり、開口率が極めて大きくとれることになります。
TOPエミッション素子は、下側が必ずしも透明である必要はありませんが、TOLEDの技術と同様なのでここ(TOLEDの分類の一つ)に入れました。
5)RGB(赤、緑、青)RGB(赤、緑、青)を積層させ、1ドットでフルカラー表示が出来そう。**)
個人的には一番これを実現させて(1dotでいいからまず、作って)みたいなぁ。
6)
マルチフォトン_エミッションデバイス(MPEデバイス)
MPEの解説については、後述します。
などちょっと思いつくだけでも、広範囲に利用できそうです。
○さらなるSFチックな応用&ひとりごと(たわごと)_にいく
*)最近、無機ELでは1)のような素子が開発されていますが、無機ELでは高電圧(数百V)の駆動用インバーターが必要なため、有機材料での開発が期待されています。
詳細は、後述[似ていて否なるもの]をご参照下さい。
**)現在用いられている、電子カラー表示機器[:ブラウン管(CRT)、液晶表示(LCD)、プラズマ表示(PDP)等]は空間的に配列(マトリックス状に並べた)させたRGB(赤、緑、青)画素の各成分比によって、カラーを表示している。したがって、フルカラー画素一つを表示するのに少なくとも、3画素(R,G,B)が必要となる。
もし、4)のように、(OLEDが非発光時に透明であるという利点を活かして)縦方向にRGBを積み上げることができれば、画像領域に与えるインパクトはとても大きように思えます。
少なくとも、解像度は従来のカラー表示機器と比較して一挙に3倍になるはずです。 (TFT等、駆動回路の配置については、ここでは考慮していませんが・・・)
最近、酸化物で透明トランジスタが試作されたという話もあり、ちょっと現実味を帯びてきました。
・従来のカラー表示画素配置とSTOLEDタイプ(積層型)カラー表示画素配置
電源OFF:よく見えないけれど前面に、ガラスのようにOLEDがあります。
電源ON:OLEDがが薄く発光&後ろもまだ透けて見えます。
電源ON:さらに電圧を上げると、発光が強くなり、後ろの文字が隠れます。
外部照明を消したところ(OLEDの電源はON):導波光効果でエッジが光り、ガラスの位置が良く分かります。
電源OFF
電源ON
2001年度1年、客員研究員としてお邪魔して、お世話になったClemson大学(USA)でのマスコット(クレムソン・タイガー)のシンボルマーク、いわゆる虎の足跡(肉球)を作ってみました。
LCD/PDP International_2002でデンソー配布のパンフレットより写真を抜粋。
また、すでに高級乗用車のメーターの一部(全く私には縁がなさそうな、日本の有名メーカーの高級車のさらに上の方のグレード)に浮き上がるデジタルメーターとして採用されているようです。
2.透明版の側面から光を導いて発光させる方法
よく、電子手帳とか、携帯電話の光源として使われている方法と類似(この場合はバックライトの代わりに側面から光を入れているはず・・・)
光ファイバのように透明ガラス(またはプラスチック)内に光を伝播させ、途中に光を散乱させる場所を作ると、
あら不思議、そこが光っているように見えます。
(これは私の推測に基づいて記載しました。上にあるのが多分光源(LED)ユニット。そこの光源の色を変えて表示しているものと思われます。)
お店(マルカ電機工業)の方にお断りして、写真を取らせて頂きました。
3.ショーウィンドウにプロジェクタで表示する方法
これを見た時、(もう、巷ではここまで進んでいたのか![私の研究は...という事で]
気絶しそうになりましたが、よ〜く見てみると奥の天井に仕掛けがありました。
ショーウィンドウを2.と同様曇りガラス(光を散乱させる場所)にして、プロジェクタで照らす方法のようです。
これと同じ方式のものを、銀座「松屋」各階エスカレータ前、湘南モールFillの1階で
みかけました。(2003年時点)
最近はネットで「透明スクリーン」にて検索すると、同じ方式と思われるものが、いろいろ出てくるようです。
これらは、確かに透明表示素子ですが今、お話させて頂いているTOLEDとは異なるものです。
前述したように、数百nm単位のOLED_1ユニットのn回_積層をもって、1個_or_n個の素子と言うかどうかが、この話の要になっていると思われます。
この話を理解する上で混乱の元(と思われる)のは、今まで電極を含んで、表も裏も透明な機能性薄膜にキャリアを注入することによって発光(フォトンを放出)が起こり、光を取り出せる_という点にまで、QE定義の領域の考慮が(我々は)及んでいなかったことに、あると思われます。
・MPEにおけるキャリアの移動について
Q.「なんで、キャリアの供給が素子の中間にあるCGLから行われるのでしょうか?」
私もはじめ、キャリアがなにも無いところから湧き出るのか?
という疑問がありました。
例えばCGLの上の層にホールを供給した場合、CGLの下の層へ、電子を供給すれば +,−のバランスは取れる(+−=0、外からの供給は必要ない)ことになる。 供給するきっかけ(バイアス)は外から繋がれたキャリアによるが、最終段の 電子(MPEの一番上の電極からの注入)と最終段のホール(MPEの一番下の電極から の注入)さえ供給のつじつまが合えば、内部のCGLは上述の理由で自己完結(+−=0)
することになります。
CGLで発生しているトータルのキャリアは入り口と出口だけをカウント(内部の分はすべて相殺)し、QEは(CGL数+1)=発光ユニットの数」でいいことになります。
量子効率の定義が「入力されたエレクトロンに対する、出力されるフォトンの割合」である以上、100%を超え得ることになります。
2002年応物・春では、CGLに透明導電材料であるITOを用いていましたが
2002年応物・秋[(株)アイメス 仲田壮志氏_他 &山形大/院_城戸先生]では、単体ではほぼ絶縁材料である
電荷移動錯体を用いています。
(オームの法則位しかイメージできない私には、)仕切り層が絶縁体なのに
何で電気を流すのか、不思議でした。
これは、D(ドナー)とA(アクセプタ)[ここでは、αNPD(D)とF4TCNQ(A)または、αNPD(D)とV2O5(A)]を隣あわせることで、電荷移動(そのまんま(名)です・・・)が起こり、電流が流れる機構のようです。
電流を流して駆動する以上、各発光層の中間に挟む材料は「透明な導電膜しか使えない!」という固定観念(私だけか?)を打ち破る提案であり、かつ、中間に挟む材料自身がキャリアを生成している層、いわゆるCGL層になっている(と呼べる)証拠であるように思えます。
但し、この素子は直列ですから、フォトンを注入するための電圧はn倍高くする必要があるはずです。
ここまでの話を簡単に整理すると、発光層をn段重ねたMPE素子は
・効率(cd/A)では、ほぼ発光層数倍のn倍になる。
・効率(lm/W)では、ほぼ1倍[但し、個々の発光層を低電流で駆動できるため
実際には2割増し(1.2倍)位にはなるそうです。](2003.3.13加筆部分)
この文末TangらのMPE構造&燐光材料では、低電圧では上述通りほぼ1倍、電圧を大きくするとそれから外れて、積層の方が効率が良くなるようです(2004.4加筆)
・輝度をn倍にせず、1倍のままなら、駆動電流が1/nで済むため、簡単な寿命の
見積もり[(輝度輝度と寿命の積は一定:後述)]では、寿命がn倍になり得る。(2003.5加筆部分)
2.低電流駆動によってa-Si_TFTが使える(はず)(2003.3加筆部分)
前述したように、OLEDは電流注入型の素子であるため、画素を駆動する電流はLCD(液晶ディスプレイ)と比較して大きい。このため、それを駆動するトランジスタは大きな電流を流せるもの(p-SiTFT以上)に限定されており、製造コストの安いa-SiTFTは使えない、というのが、定説(?)でした。
しかし、このMPE技術を使えば、多層発光ユニット構造にすることで、a-Siで駆動できる低い電流で、(それなりの)輝度が得られる利点があります。
p-Siとa-Siの製造の手間とコストの差を考えると、このブレイクスルーはかなりインパクトがありそうです。
[追加]2003.3に
a-Si TFT駆動の20型低分子OLEDディスプレイ(試作機Chi Mei Optoelectronics Corp.
Tainan )
の発表がありましたが、これはa-Siの方の工夫と思われます。
3.クロストークがない(2003.9 加筆部分)
OLEDの電極には、通常導電体が使用されるため、電極間でのクロストーク(干渉)
が問題になります。つまり、光ってほしくないところが、発光部分の洩れ電界
によって、僅かに光ってしまいます。しかし、上述MPEの仕切り層に絶縁体である
CGLを用いれば、この現象は無くなります。
さらに、バックライト、照明といった大面積のOLEDを考えた場合、上述の Insulative CGLを用いれば、電極面内での電界の不均一が起こらないため 電極の入り口が明るく、遠くなるほど、暗くなる現象等を回避できます。
4.寿命
OLEDは電流注入型の
素子であるため、定電流駆動時の輝度低下が定義した輝度
(通常、半減輝度(初期輝度の1/2なる時間))になる時間を輝度
寿命とするのが一般的である。OLEDは電流注入型の素子であり、
単純に電流(キャリア注入量)と劣化が比例していれば、輝度と
寿命の積は一定となる。この領域では、簡単な加速劣化として輝度
を上げ寿命を測定することで、通常の輝度での寿命を見積もることが
出来る。
したがって、輝度をn倍にせず、1倍のままなら、駆動電流が1/nで済むため、
簡単な寿命の見積もり(輝度輝度と寿命の積は一定)では、寿命がn倍と見積もることが出来る。
まだ実証(n倍になる)された訳ではないが、SID 2003でのアイメスと山形大学の城戸淳二教授
のグループの報告によれば、長寿命化の効果は示されたと思われます。(2003.5加筆部分)
5.歩留まりの問題
OLEDは(超)薄膜なため、電極間のショート等といった原因が歩留まりの低下の一因となっています。MPEは、発光ユニットを積層させるため、層が厚くなり、電極間のショートを回避できます。